メタバースとは仮想三次元空間のことで、「Second Life」や「Habbo」などは日本でも一定の知名度があるだろう。この4月に実はHabboは日本でのサービスを終了しているが、Techcrunchに拠れば、このティーン向けメタバースのグローバルでの売上は7400万ドル、UU1150万、キャラクター数1億2000万以上にもなる。
日本では、Habboのような大手が撤退する一方で、「ニコッとタウン」のように新たに(08年9月)参入する事業者もいる。ニコッとタウンはスクウェア・エニックスとニフティによるHabboと同じ2Dの仮想空間で、ブラウザ上のFlashで表示される為、インストール等の手間もPCのスペックなども要求されないのが特徴。09年4月末で20万人の会員を獲得、毎日23000のブログ投稿がある等、プレスリリースに記載されている。09年1月に10万人、そこから3ヶ月で10万人獲得、ブログ投稿から見ればアクティブ率も高く、順調に成長していると言える。日本版Habboと言っても差し支えないだろう。
http://www.nicotto.jp/
「アメーバピグ」はサイバーエージェントのメタバース事業で、ニコッとタウンにやや遅れてサービスが開始されたものの、ニコッとタウンを上回る立ち上がり(サービス開始1ヶ月で10万人の会員を獲得)を見せている。成長速度という点では母体のアメブロには500万人の会員がいるのだから、当然の結果と言えるかもしれない。サービス内容自体にはそこまで大きな差はない。
http://pigg.ameba.jp/
独自性・目新しさという点ではドワンゴによる「Ai Sp@ce」だろう。美少女キャラクターとの恋愛がテーマとなるアドベンチャーゲームやアニメーションの世界が再現された仮想空間である。自分自身のアバターだけでなく、一緒に生活するキャラドルを作ることができ、作成したキャラドル達との関係性を作り上げていく育成・恋愛ゲームの要素もこのメタバースの売りとなっている。
http://aisp.jp/home.html
そして、この4月で正式サービスインから1周年を迎えたのが、「Meet-me」である。運営・開発を行うCo-Core社は、家庭用ゲーム機用のゲーム開発で知られるフロム・ソフトウェアやトランスコスモスのジョイントベンチャであり、伊藤忠商事、フジテレビ、イオン、さらにはスクウェア・エニックスからも出資がある。大企業を巻き込むことに成功しており、マネタイズには最も近いところにいるサービスだろうが、会員獲得に苦戦している模様だ。
http://www.meet-me.jp/
スクウェア・エニックスが「ニコっとタウン」と「Meet-me」両張りしていることからもわかるように、メタバース事業の勝者はまだまだ決しそうにない。Yahooが2次元のポータルサイト事業として大きな成功を収め、いずれ、その勝負の場が3次元に移ると考えれば、チャレンジせずに手をこまねいて見ているだけ、という選択肢はないのだろう。大半のメタバースが過疎に陥り、隙間がぴゅうぴゅう吹いている状態だと知っていても、そこに張らないリスクが大き過ぎる、と皆考えている。
■ 新規事業立ち上げに際して考えてみたい
DeNAの「モバゲータウン」が主にティーンをターゲットとして急成長し、その後で20代〜30代にも普及していった。携帯電話というデバイスや無料で遊べるゲームコンテンツだから、ティーンというのもあったのだろうが、アメーバピグやニコっとタウンの立ち上がりを見ていると、新しいサービスの利用に積極的であり、良いサービスであれば口コミであっという間に横に広がっていくというティーンの別の特性も見逃せない。
最初はティーンをターゲットにして事業を立ち上げ、後に年齢層を上げる形でターゲットを広げていく、という考え方はできないだろうか?