2009年06月30日

「おかしのまちおか」から新規事業を考える

コンビニやスーパーには数え切れないほどの種類の商品があるが、その中で、コンテンツパワーのある商品とはなんだろうと考えたときに、「お菓子」が特別な存在であることに気付く。

勿論、弁当や飲料も相当なコンテンツパワー(集客力)がある。しかし、弁当には賞味期限があり、自炊・外食店という競合が存在、また、飲料にはカフェや自販機や水道水という競合、がある。ウォーターサーバーを置くオフィスも増えてきた。

これに対して、お菓子は自販機もなく、自炊することも難しく、賞味期限も長く、さらには「選ぶ楽しさ」という点で圧倒的だ。

この「選ぶ楽しさ」というのは結構馬鹿にならなくて、みんな、はるばるIKEAに行ったり、ららぽーとに行ったり、或いは巨大ホームセンターを半日かけて徘徊して、疲れたけど、楽しかったとこう言うわけだ。

お菓子の専門店として年商100億円超を商う「おかしのまちおか」はお菓子に特化して品揃えを充実させることで、お菓子を選ぶ楽しみという点でセブンイレブンやイオングループのような超一流企業を相手に回しても勝つことができる。

このように考えると、「おかしのまちおか」が成功した理由、お菓子を商材として起業した理由、が論理的にも導ける気がする。

■ 新規事業立ち上げに際して考えてみたい
この、「おかしのまちおか」から得られた示唆は、当たり前になってしまったコンテンツのなかにも、実はお宝があるということだ。ありふれたコンテンツの中から、最も価値のある一部を切り出すこと、でビジネスになる、とも言っても良いだろう。

他の例で言えば、リクルートはこの春にタウン&マーケットという新規事業を始めた。これはテレビの番組表と新聞の折込チラシを組み合わせた無料誌である。新聞という媒体の中に埋もれてしまっていた、しかし、実はパワフルなコンテンツである番組表と折込チラシを新聞を購読しない世帯が増えているという時代に合わせて提供する。

若い男性はあまり実感がないかもしれないが、主婦や高齢者は番組表、折り込みチラシを相当精緻に読み込んでいる。また、番組表も折り込みチラシもリクルートが手を掛けて制作するコンテンツでなく、無料コンテンツである。この目敏さは見習いたいものだ。

http://www.machioka.co.jp/index.html
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2009年06月13日

ヤマト運輸の新規事業立ち上げの仕組み

ヤマト運輸のグループ内での新規事業創出の制度「Y-Venture Dream」は設立が2002年。それ以前にも「スキー宅急便」「時間帯お届けサービス」など社員によるアイデア発の新規事業はあったが、宅急便を前提として、そこから派生するような新規事業に限定されていた。それが、この「Y-Venture Dream」以降は宅急便に囚われずに、柔軟に新規事業開発に取り組む契機となっている。

ヤマト運輸グループの社員から新規事業のアイデアが応募されるのだが、その際の条件として、1)事業開始後3年以内に単年度黒字化が見込める事業である、2)応募者自ら経営する意欲があり、リーダーとしての資質を持っていること、が問われる。

立ち上げ「3年以内の単年度黒字化」は社内ベンチャーや新規事業への投資判断を行う際によくある一般的な基準だろうが、後者の「リーダーとしての資質」については、あまり見ない基準だ。まずは事業コンセプトありきで、実行者の能力(モチベーションはともかく)については不問とする組織が多い。

応募者は、社内専門家による助言や協力の場を経て、1次審査「本部長プレゼン」、そして2次審査「役員プレゼン」と進む。2次審査で応募案が採用されると、予算1000万円でフィージビリティスタディを行う。立ち上げ3年後までは、毎年5月に事業継続審査が行われる。

「Y-Venture Dream」による新規事業の第1号としてコールセンター業務をアウトソーシング受託する「ヤマトコンタクトサービス」、第2号が先日も紹介した買い物代行事業の「ネコレ」がある。

「ヤマト運輸の新規事業への取り組みは、「Y-Venture Dream」の枠の外でも非常に活発で、「メンテナンスサポートサービス」や「ネットスーパーサポートサービス」など、時代の流れを読みながら、自社の強みを活かす形でビジネスとして形に作り上げていくさまは、例えばリクルートと較べても遜色がない。何故か?

ヤマトホールディングス瀬戸社長は日経ビジネスのインタビューで、新しいビジネスを成功させるための重要なポイントは何かという質問に対してこう答えている「ソリューションの種は常に現場にある。それをキチンと形にするためには、宅急便のセールスドライバーが顧客と対話するなかで新たな課題を見つけ出して、それを踏まえて専門のスタッフが最適な提案をしていくことが重要です」

■ 新規事業立ち上げに際して考えてみたい
その新規事業には、顧客と対話して顧客の声や不満を抽出する、そんなコンタクトポイントがあるだろうか?ヤマト運輸は、運転手をセールスドライバーと位置づけることで、顧客からの生の声を収集、新規事業開発で一歩先を行き、競合優位を保ち続けている。

http://www.kuronekoyamato.co.jp/
ラベル:ヤマト運輸
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2009年06月03日

ヤマト運輸の新規事業「ネコレ」がリニューアル

先日取り上げたECナビの新規事業「ECナビコンシェルジュ」の競合、買い物代行サービス「ネコレ」がリニューアルしている。どのように変わったかを整理するために2パターンの業務フローにおこしてみた(内情を知っているわけではないので、全くの推測で書いている)。

【リニューアル前の業務フロー】
1. 利用者からの注文をネコレシステムで受け付ける
2. ネコレ担当者Aがネコレシステムで注文を確認
3. ネコレ担当者Aが店舗担当者に電話で在庫確認、在庫有りなら確保
4. ネコレ担当者Aが利用者に在庫状況連絡、購入意志の確認
5. ネコレ担当者Bが店頭で商品を購入
6. ネコレ担当者Aが商品の発送をヤマト運輸に依頼
7. ヤマト運輸がネコレ担当者から商品を受け取り、配達

【リニューアル後の業務フロー パターン1】
1. 利用者からの注文をネコレシステムで受け付ける
2. 店舗担当者がネコレシステムで注文を確認
3. 店舗担当者が在庫確認、在庫有りなら確保
4. システムが利用者に在庫状況連絡、購入意志を確認
5. 店舗担当者がネコレシステムで購入意志を確認
6. 店舗担当者が商品の発送をヤマト運輸に依頼
7. ヤマト運輸が店舗担当者から商品を受け取り、配達

【リニューアル後の業務フロー パターン2】
1. 利用者からの注文をネコレシステムで受け付ける
2. ネコレシステムが店舗側システムと連携
 在庫を確認、在庫有りなら確保
3. ネコレシステムが利用者に在庫状況連絡、購入意志を確認
4. ネコレシステムが店舗側システムと連携
 商品の発送をヤマト運輸に依頼
5. ヤマト運輸が店舗担当者から商品を受け取り、配達

パターン1は、システムを持たない小さなセレクトショップとの連携を想定している。店舗側にとって、注文管理・決済、配達の1通りのサービスを実装しており、且つ、全く初期投資コストをかけずにPCや携帯電話からの注文に対応できるようになるというネコレシステムのメリットは大きい。
パターン2は高度にシステム化されたアパレルブランドとの連携を想定している。店舗側でも最初、インタフェースの開発にコストが発生するが、組み上げてしまえば、それからはほとんど人手を介さず、注文に対応できる。注文受付から在庫の確認が取れるまでに発生している最長3日間のリードタイムをなくして、顧客がリアルタイムに在庫を確認できるようにもなるだろう。

リニューアル後も在庫確認最長3日間のルールが残るところを見るに、現在はまだパターン1への移行段階であり、パターン2への移行はまだまだ先になると考えて良さそうだ。

どちらのパターンにせよ、リニューアル後の業務フローからは、ネコレ担当者A(センター業務担当者、社員)とB(購入代行業務担当者、アルバイト)が消える。これまでネコレが人手・マニュアルで運用してきた部分をシステム化した。これにより「人件費コストの削減」「発送までの時間短縮」などのメリットが考えられるが、現にリニューアルに対応した店舗・ブランドについては、手数料が一律1050円となる。これまで手数料は、最低3800円だったことを考えれば、半額以上の低価格化だ。対応ブランドはまだ数えるほどだが、これが増えてくれば、競合に対して大きな差別化要素になるだろう。

このネコレも、昨年末にヤマト運輸が立ち上げた新会社ヤマトマルチメンテナンスソリューションズも、ヤマト運輸という企業は「消費者のニーズ」と「業界の課題」のようなところを正確に汲み取って、的確なソリューションを作り上げてくるなという印象を受ける。

日頃、どのような企業がどのような消費者に対してどのような商品を送っているかを送っているかを観察できる、マーケティング的に有利なポジションにあり、さらには物流業という事業の特異性(新規事業を始めた際に、シナジーが発生する領域が相対的に広い)を活かした結果と見ることも出来るが、日本通運や佐川急便などの競合と較べたときにも圧倒的に際立っている。次エントリではこのヤマト運輸を新規事業開発の仕組みについて触れたい。

■ 新規事業立ち上げに際して考えてみたい
サプライヤーのためのシステムや仕組みを整備することが顧客のためになる、そんな逆転の発想でサービスレベルを引き上げられないだろうか?

http://www.nekore.com/
ラベル:ヤマト運輸 IT
posted by 新規事業立ち上げマン at 03:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 新規事業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする